丘の上の小さな町コルトーナへ行ってきました。フィレンツェから各停列車で1時間半、バスに乗り換え山道を15分。眼下にはトスカーナののどかな田園風景が広がり、レンガ色の中世の建物が残る光景はまさに絵本の中に飛び込んだよう。
フィレンツェは田舎町とは言え交通量と観光客が凄まじく、一日中騒音が絶えない。
この町に降り立ったとたん、久しぶりの静けさに感動してしまった。ああ、落ち着く…。
サン・フランチェスコ教会を参拝。ファサードは13世紀頃のままらしく素朴で温かみのある感じですが、内部は17世紀に大幅に手が加えられ、豪華な感じに。堂内左右にはやはり17世紀のバロック的な油彩大作がズラリと並んで圧巻ながら少々重々しく感じていると、何故かそのうちの1点が外され床に置かれている。その絵があった場所にはやさしいフレスコ画が顔を覗かせていました。
建設後、最初に描かれた作品でしょうか。オレンジの鮮烈な色彩が残っていることに驚きつつも、17世紀の写実的でドラマチックな油彩画よりずっと神聖な印象を受けました。
この後、教区博物館へ。ここの目玉はこの町出身のルカ・シニョレッリですが、カチコチの人体表現とうるさい構成があまり好きになれず。予想通り良かったのが、フラ・アンジェリコ「受胎告知」。
非常に気品高い作品でした。サン・マルコ修道院の受胎告知はフレスコなのでこちらのほうが圧倒的に完成度が高く感じる。円と直線のリズムや明暗構成がきれい。実物を見て一番先に目に付いたのが意外にも金箔の部分。高い位置に展示されているので見る角度によって箔に外界が映りこみ、表情を変える。この効果が不思議にこの作品をより魅力的にみせていました。
2階飛び出してます。これは中世の建築法の家だそうですが、梁の部分がなんと木です。弓なりに反っててコワイ。当時一階の面積で課税額が決まったので、節税対策だったとのこと。大昔から切実だったんですね…
帰りの電車内ではイタリアらしいハプニング。
陽も落ち相当暗くなっているのに、なかなか車内に電気がつかない。ああ、節電しているのね…と思ったら!前後の車両は煌々と点いてるじゃん!そう、この車両だけ故障です。車掌さんが検札にくるも、さすがに気まずくなったのか何もせず素通り。車内はその後も点く気配はなくどんどん暗くなっていき、フィレンツェ到着頃には真っ暗闇の幽霊車両になっていました。遊園地のアトラクションみたいで笑えたけど、これ、スリし放題ですよ。しかし乗客の誰一人文句を言わず最後まで平然と乗っているイタリア人はさすがです。