今日は1日ヴァティカン内で過ごすことに。幸運にも並ばずに入れましたが、中はやはり人の渦。
エジプト美術を見たあと、八角形の中庭ではやはりコレ、「アポロ」と「ラオコーン」。残念ながらオリジナルではなく、紀元2世紀、ローマ時代に複製されたもので、原型は紀元前4世紀のブロンズ像だそう。これの石膏像もずいぶんデッサンしました。正面向かって左下から描くのが好きだったな。それにしても石膏では再現不可能な掘り込みの深さ。美しいプロポーションとムーヴマン、衣の表現の完成度には驚かされます。紀元前4世紀とは!
アポロが弓を射た瞬間を表しており、左手には大きな弓を持っていたのでしょうか。
ラファエッロの「アテネの学堂」の部分。間近まで近寄れるので、ジョルナータ(1日分の仕事)やスポルヴェロによる転写の跡、絵の具の乗せ方が観察できる。ローマの美術館や教会はフラッシュ無しでの撮影は許可されているところが多く、ありがたくマチエールや修復の跡を接写させてもらう。
このあとシスティーナ礼拝堂のミケランジェロの天井画を見る。
先ほどの「ラオコーン」や「ヴェルベデーレのトルソ」はじめ、数多くのギリシャ彫刻を見てからこのフレスコ画を見ると、筋肉表現やポージングにミケランジェロの古代彫刻への心酔が実感でき、そしてこの壁画の影響を直に感じるカラッチ、ピエトロ・ダ・コルトーナなど、ローマのバロックへの橋渡しとなったことが理解できます。
とにかく、システィーナ礼拝堂での制作によって「彫刻家」から「画家」になったミケランジェロの影響力の大きさは計り知れないものがあります。
カラヴァッジョ「キリスト降架」。「普通のおじさん」顔のキリストが生々しい。カラヴァッジョの背景の黒はピリッと引き締まっていて美しい。地と図のバランス、要するに構図に緊張感があるからでしょう。また、鉛白の乗せ方が的確で、張りがあり、画面にしっかり食いついている。カラヴァッジョはこういった絵作りに関して気負わずさらっとやってのけている感じがします。
サン・ピエトロ寺院内へ。カトリック教会の総本山であるこの大聖堂の巨大さたるや。それにしても豪華です。寺院内外はバロック最大の彫刻家、建築家であるベルニーニの力によるところが大きいですが、ベルニーニの作品はどうも興味がわかない。思えば街中の主要なところにベルニーニの建築、彫刻があふれており、ローマは「ベルニーニ劇場」状態。しかし彼のバロック美術を理解するにはカトリック教会の対宗教改革運動に連動していることを考えなくてはならず、簡単に見るわけにはいかない。
宗教改革といえば、ぼくはクリスチャンではないですが幼稚園、中学、高校とプロテスタントのキリスト教学校に通っていたので、これほどの金銀財宝の詰まった本山になんとなく違和感を感じてしまう。がしかし、この本山ありきで西洋美術が完成に向かったわけで、無宗教の自分はただありがたく鑑賞するのでした。
ホテルに戻る際、テルミニ駅構内を突っ切ると、ホームに古いユーロスターが。新幹線0系ふうで郷愁をさそう。鉄ではありません。